若手社員の逃げ場

仕事で辛いことから現実逃避して、気持ちの休まることを書きたいです。

窪みのネームプレート

 


会話の糸口を探し続けている。なにも知らない人とどうでもいい話をしたい欲求がある。SNSでメッセージのやりとりをするのではなくて肉声でコミュニケーションをとりたいのだ。友人たちとは繰り返される緊急事態宣言により、再開する予定を立てられないし、職場で仕事と関係ないことを話し続けるのは周りの視線が気になる。或いは、知り合いに突飛なことを話して引かれた後も関係性が続いてしまう。

 


だから今後会うことはないであろう人になんの前情報も与えられずに話をしたい。しかし街中で見ず知らずの人から声をかけられたら恐怖であろう。きっかけがいるのである。それも自然な。

 


先日、カフェでネームプレートを見つけた。壁の、段になっている間に安全ピンのついたプレートである。

 


注文以外で店員さんと話ができるチャンスではないだろうか。人と話したい一心で近くの店員さんを呼んだ。ネームプレートのことを告げると、謝罪をしてキッチンに戻っていた。会話は終了した。「すいません」で呼んで、「申し訳ありません」で会話が締め括られた。謝意が多い会話である。しかし、なにもぼくは謝って欲しかったわけではない。なんらかのリアクションが欲しかっただけである。Siriよりも人間味の感じられる言葉を聞きたかっただけだ。しかし店員さんの行動に何ひとつ間違いはない。

 


ぼくは自分の願望がひょっとすると無茶な願いではないかと疑った。戻った店員さんはキッチンの店員さんに向かってネームプレートの話をしていた。なにやら笑い声が聞こえて楽しげである。そんな会話がしたかった。