若手社員の逃げ場

仕事で辛いことから現実逃避して、気持ちの休まることを書きたいです。

仕事に対する不安の種類

 


会社に100%の本音を伝えられる人が何人いるだろう。ぼくはおそらく同期の5人だけだ。他の人はある程度心を開けても、どこかに忖度が生じている。それが"社会"と言われればそれまでなんだろうが、だからこそなんの気負いもいらない家が愛おしく思う。同期の内、同じフロアで働いているのは1人のみである。しかし、多くは出張に駆り出されていて飲み会の約束をしようとしても予定日が2、3ヶ月後になることはざらである。彼は頻繁に社外で働いている間にいろんな人と仲を深めたようだ。

 


ぼくの会社が手掛けているのは社内設備に分類されるので、機器は大きく社内から人を送るのにも1人だけというのはレアケースだ。営業に機械関連の人間、電気関連の人間が同行する。ヒトは見知らぬ土地に行くと知り合いを頼るのであろう。ウチの会社では社内よりも社外で仲良くなるパターンが多い。かくして同期の男は着々と社内に人脈を構成して、先輩の社員に対しても軽口を叩くほどの余裕を得たようである。対してぼくが心を全開にできるのは彼のみだ。嘘の言葉を吐き続けて心がくしゃくしゃにされると、彼と話して心を開けて欲しくなる。

 


ただ彼は社内に仲の良い人が多い。いろんな人に話しかけられて、いろんな人に話しかける。そしてロスした時間を取り戻すように忙しく働いている。ぼくはクラスのマドンナと2人っきりになりたいのに話しかけられずにいるような、淡い恋心のようなものを抱えていた。ぼくの後方にいる彼が1人じゃないかチラチラみては、話しかけられずにため息を吐いてすらいた。

 


トイレに立ったときに彼とすれ違った。会釈だけしてトイレに向かおうとすると、彼から声がかけられた。根暗なぼくは歩きながら挨拶をする高等テクニックを持ち合わせていない。彼は人の行き来が激しい複合機の近くで人の往来など気にすることなく話していた。本当は彼とは攻めた下ネタや恋愛論について話し合いたかったが、周りのことを気になっていたので「どれくらい忙しいか」とあたりさわりのないことを聞いた。すると彼は毎月、協定ギリギリの45時間の残業をしている、と話した。この会話をしたのが3月の末で年度末であった為、規定を気にせずに無制限に残業させられるだろう、とも話していた。辛くないか、と僕が聞くと、彼は、やることがなくなってしまうことの方が怖い、言った。彼は健全に仕事にやり甲斐を感じているようだった。

 


ぼくは精神的な弱さが会社に周知されているのでほとんど定時に帰れる(最近は残務にストレスを感じるようになったので残業をしたい気もするが)。元々『残業が少ないといいな』と思いながら入社したので、当初の願いは叶っている。彼はどんな思いで入社したのだろう。仕事に対するやり甲斐を求めて入社したのか、仕事で成功して残業が気にならなくなったのか。ぼくは仕事がなくなる心配よりも、「このままなにもできない人間のまま歳をとってしまうこと」を心配している。それはこの会社でたくさん働けば解消される心配なのかもしれないし、社内社外を問わずに個人で知見を広げないと解消できない問題なのかもしれない。

 

 

 

緊急事態宣言がいつ終わって、いつ再開されるかもはっきりしないぐらい未来は不透明だ。彼の仕事が一気になくなるかもしれないし、なにもできないぼくが突然、首を切られるかもしない。だから安全策なんてものは周りを見渡しても不確かである。ただ仕事への向き合い方が代わったのは事実だ。残業は気にしない。時間を捧げてでもぼくは何者かになりたい。