香取慎吾版「西遊記」の、嘘の幸せ
目が覚めて「いい夢を見た気がする」とぼんやり夢の内容を思い出そうする。この瞬間が1番穏やかな状態かもしれない。大抵舞台は学校で、ぼくが何気なく言った発言が好意的に取られて祭り上げられるというような内容だった気がする。ハナハナの実を食べたぼくがデパートで暴れ回っていたこともあった。物語がぼくを主演にして繰り広げられる。
昔、香取慎吾さんが主演で「西遊記」というドラマをやっていた。孫悟空とか猪八戒が出てくるアレだ。その中で、人を夢の世界に閉じ込めてしまう敵が出てくる。幸せな夢をみせて、香取さんの仲間たちは捕らえられていく。
香取さんは「そんなことをしても現実でなにも得られない」と敵を倒した(うろ覚えですが、こんな言い分だった気がする)。何年も前の記憶だが、自分の1番穏やかな瞬間が「夢を思い出している時」だと気づいた時に思い出した。このドラマを観た当時も香取さんの行動が理解できなかった。
現実で得られることってなんなのか考えてしまう。地位、名誉、友人、家族、お金。死ぬ間際にこれらのどれが価値を持つのかは分からない。しかし、どれかから幸福な気持ちにさせて貰えたらそれでいいと思う。そして夢の中では既に幸せな気持ちになっていたのである。幸福な夢をみながら老衰できたらどんなにいいか。
たまに、楽しい夢をみるために、明るいコメディ作品を何作も観てから眠ることがある。「夢は記憶を整理する役割がある」と聞いたことがあるからだ。
現実でなにも得られなくたっていい。自分が幸せだと思えられたら。嘘だっていい。ぼくは気づかないフリを続けるから。