若手社員の逃げ場

仕事で辛いことから現実逃避して、気持ちの休まることを書きたいです。

安倍公房「砂の女」における砂の流動性

 

 


安倍公房さんの「砂の女」を読んだ感想です。ネタバレを含みます、ご注意ください。

 


昆虫採集が趣味の主人公は新種の虫を求めて砂地へ来ました。そこで砂の下敷きになりそうな家に閉じ込められてー。

 


砂は細かくなった岩です。軽くて乾燥しているので簡単に風に運ばれていきます。

 


この性質を主人公は現実と対比しています。絶え間ない流動性を持つ砂と、年中しがみつくことを強制される現実。虫以上に砂に魅せられたように感じました。

 


しかし舞台の村の砂は、家を腐らせる程の湿度を持っていた。本来の砂の流動性は失われ、家を取り囲むように降り積もった砂。現実よりも現実的な砂に、家を潰されないように住人の女性は雪かきならぬ砂かきを毎日させられていた。

 


主人公はこの家から抜け出そうとするも数日が経ち、続けざまに仕事を休むことになる。

 


ぼくも有給休暇を使った後に、理由をつけて何日も会社を休んだ。上司と面談をした時に

 


「休むとしても1日までだ。それ以上休むと会社に来づらくなる」

 


と言われた。

 


この主人公は果たして、この村を出られた時に実生活に戻ることが出来るのだろうか。戻る自信がないからあの村に留まってしまったのではないか。砂の自由を求めながらも、帰る場所が担保されてないと手放せられない。