安倍公房「第四間氷期」における未来の罪
安倍公房さんの「第四間氷期」を読みました。
予言機をつくった人は個人の未来を予言しようとするが、思わぬ事件に巻き込まれてー。
もし予言機が出来たらどんな影響を与えるだろうか。ニュースで少子化対策に、人工知能による相性テストで異性を勧める研究がされていると報道されていました。機械がデータを分析して人にすべき行動を提言する、そんな未来はそこまで遠い話ではないかもしれません。
本書では
「社会を予言でしばるということは、なんたって自由意志に反することですからな」
というセリフがありました。たとえ強制的な指示ではなくとも機械に異性を勧められてしまえば恋愛観は揺らいでしまうと思います。友達に恋愛のことで相談することはあるとしても絶対的な正解が返ってくるわけではない。アドバイスしてくれた友人が突然、破局してしまうかもしれない。だから一意見として受け入れる。しかし機械に同じことをされるとそれが正解のような気がする。なにかパートナーと問題が起きても機械が問題ないと言っていればそれが正解だと思ってなにもせずにいるかもしれない。
「未来に対する罪というやつは過去や現在に対する罪とはちがって、本質的、かつ決定的なものだからね」
というセリフもあった。過去の罪は悔い改めることができるだろうが、未来に起こしてしまう罪に対して謝っても、決定的に罪を起こしてしまうのならなんの価値ももたない。その罪を防ぐためになんの悪意も持っていない人を前もって捕らえてしまうこともあるだろう。あらゆるリスクが排除されて安心に暮らせるかもしれない。しかしその機械の判断をどこまで信じればいいんだろう。