若手社員の逃げ場

仕事で辛いことから現実逃避して、気持ちの休まることを書きたいです。

基準色

 

「矢視と正面図で絵が違う」

 


今日言われた設計ミスの苦情電話だ。センサーの取り付け位置が図によって変わってしまっているのでどこに付ければいいか分からないと言う。標準で場所が決まってるわ、バカめ。

 


と、標準図を開いたぼくは思った。開いてから。

 


その後は別件で製造の棚田さん(仮名)から電話がかかってきた。図面を見てるとどうも部品が取り付かない、ということだ。確認してみたところ付けなくてもいい部品の心配をしていた。

 


今日はほとんど、棚田さんのお守りをして過ごした。1件目の問い合わせから間を開けずに電話が鳴る。

 


「塗装の色はどうする」

「必要な寸法が入っていない」

 


塗装の問い合わせはまあいいが、寸法に関しては全て入っていた。どうやら棚田さんは図面の見方が分かってないらしい。

 


ぼくがこの間読むのを断念した「人の目、驚異の進化」で、人の目は「肌色を認識し辛い」と書かれていた。昨今のCMやドラマでは目を惹くような鮮やかな色が使われている。そのテレビ画面に映し出された色を被験者に答えてもらうと、明らかに肌色の回答率が低いらしい。画面に人が写っていても、その肌の色は認識されずに服の色や空の色、植物の色に目がいく。テレビに誰が出演してるかは頭にハッキリ残っているのにだ。

 


これは肌色を「基準色」として捉えているからである。普段の肌色は「透明」かのように認識されないが、体が赤くなったり、青くなったりするとすぐに気付く。体の異常を瞬時に発見できるようになっているのだ。色素的には大きく色が変わっているわけではないが基準を持っているのでそこからズレると体の変色に気づきやすいと言うことだ。

 


白黒の設計図にはぼくの基準色はないようだ。何十年も働いている棚田さんが気づかないのも製造管理の人間で図面自体が仕事ではないからだろう。

 


アダルトビデオに出ている女優さんの顔がなんとなく変わっているのはすぐ気付く。ぼくの「基準色」はアダルトビデオのようだ。