漫画「メダリスト」の向上心
月刊アフタヌーンで毎回キッチリ感動させてくれるのが漫画「メダリスト」だ。
フィギュアスケートを題材にした漫画だが、主人公の女の子は気が小さくてお金のかかるスクールに通いたいと親に言えずにいた。そんな想いを抱えたまま何年もの月日が過ぎた。しかし、フィギュアスケートはスピンやジャンプをする為、体の軽い幼い年齢でピークを迎えるそうだ。だからピークに合わせて早めにはじめた方が有利なのである。周りから出遅れた逆境に、長年溜め込んだ「滑りたい」という気持ちで立ち向かう話です。
今月は第7回。ここから今回の話のネタバレをするのでご注意ください。
自分にミスが見つかり塞ぎ込む主人公にコーチが言葉をかけました。
「いのりさんの向上心はすごくパワーがあるけれど
同じ勢いで自分を責めてしまう
きらいがある」
「焦らなくていいんだよ
できない事と向き合った時間は
未来でまた
壁にぶつかった時の助けになる」
ここまで小学生に共感できる漫画があるのだろうか。自分を責めてしまうのは向上心の現れだ。楽観的に考えて自分を守ったり、人のせいにすれば傷つかなくて済むかもしれない。だけど、歳をとったときに綺麗な体のまま逃げ続けられるのだろうか。
ぼくは中学時代、野球部に入っていた。はじめたのは小学5年生の終わり頃。この漫画のいのりちゃんのように周りから遅れてはじめた。初心者がバットを振ると手にマメができる。そのマメが痛まないようにそこを避けながらバットを振ると今度は違う場所にマメができる。次第にマメの位置が固定されて、手の皮は厚くなり、理想的なスイングができるようになる。
失敗は怖い。大人たちは同じ轍を踏まないように失敗を責める。ぼくはそれに怯えてなにも考えられなくなる。しかし、考えるのをやめちゃいけない。向き合った時間が未来の力になるから。もう手には一つのマメもない。もう一度バットを振ろう。