若手社員の逃げ場

仕事で辛いことから現実逃避して、気持ちの休まることを書きたいです。

馬場悠男『顔の進化』と種の優位性の話

 


漫画『HUNTER×HUNTER』にイカルゴというキャラクターがいる。名前に『イカ』が入っているがタコにそっくりなデザインだ。紛らわしいので登場人物が指摘すると「タコと一緒にするな」という。彼はイカに憧れているのだ、タコなんぞと一緒にされたくない。なんで憧れているのかを尋ねると、「人間だって顔の数ミリのバランスを気にするじゃないか、おれにとってはイカのフォルムがいいんだ」といった。ちなみに本物のタコはほとんど視力がないそうだ。

 


朝、目を覚ましたら髪を濡らして寝癖をとる。髪がどちらに向いてようが構わないし、寒い日に髪を濡らすのは気が進まない。それでもだらしくなく思われたくなくて巻き上がった髪を下ろす。マスクで隠れていて見えやしないのにヒゲまで剃る。ヒトは顔をみてヒトを識別する。この顔を持ってしてぼくなのだ。生田斗真さんやトムヒドルトンになりたいと願っても同じ顔のままだ。

 


馬場悠男さんの『顔の進化 あなたの顔はどこからきたのか』ではそんな顔について学べる。本書ではオランウータンを例にとった下のような文がある。

 

 

 

「たとえばオランウータンは広い縄張りの中で第一位のオスだけが、男性ホルモンの分泌に助けられて頬に巨大なヒダを発達させる。そんなオスは、メスにアプローチするにも有利である。そのオスの影響下にある第二位以下のオスは、ストレスを感じて男性ホルモンが充分に分泌されず、ヒダが発達しない。いわばメス的な状態になってしまうのだ。しかし第一位のオスがいなくなれば、第二位のオスに男性ホルモンが分泌されるようになり、ヒダが発達する。」

 


人間でも精神的なホルモンバランスの変化で顔や身体の状態がかわっていくだろう。過度にストレスを受けたらじんましんがでるし、南海キャンディーズしずちゃんはボクシングをはじめたらヒゲが生えたそうだ。相対的に人より優れていると感じると自分に自信が持てて魅力的な顔になっていくのかもしれない。

 


オランウータンが生張りの中での優位性を築くのは体の大きさや喧嘩の強さだろう。では人の優位性はなにをもってして与えられるのだろう。ひとつは本書のテーマでもある顔の良し悪しであろう。或いは金銭をどれだけ蓄えているかも現代においては大きな優位性となるだろう。

 


生物として長く生きようと思うのは自然なことで、金があればまず早死のリスクは減らせそうである。たとえば女性芸能人が一般人と結婚したとテレビが報じたときに「一般人の星だ」と盛り上がるが、大抵はIT社長だったりのお金持ちである。第一報から裏切りの続報までの流れはもはやお約束のノリになっており、ぼくは吉本芸人のように椅子から転げ落ちる。

 


淘汰されないように、種としてどんなタイプの異性とつがいになれば長く生き残れるかは口を開かなくても同性の間で共有されているようである。それが顔であり、金なのだ。HUNTER×HUNTERイカルゴはイカになりたいと願った。ぼくはIT社長になりたい。