若手社員の逃げ場

仕事で辛いことから現実逃避して、気持ちの休まることを書きたいです。

チーズはどこへ消えたの説教くささ

 


チーズはどこへ消えた、という本がある。絵本ほどの薄さながら「人生観が変わる」との帯が巻かれていて気になった。当時のぼくは買おうか迷ったが絵本ほどのボリュームの本にまとまったお金を出す気にならずに購入を踏みとどまった。タイミングが違っていたら買っていたのかもしれない。この本が誕生祝いに弟から送られてきた。

 


3つ離れている兄弟でこちらからプレゼントすることはあるが、むこうからはほとんどない。今年から市役所で働いているが、役所の教育係は「人にモノをあげること」を教えてくれるらしい。珍しい出来事に軽く感動しながらもページをめくった。

 


この本は社会人たちが同窓会で旧友と再会し、その1人が感銘を受けた寓話としてネズミと小人の話をする。本書ではどのキャラクターに自分が近いか考えながら読むことが推奨されている。特にスポットを浴びるのが対照的な性格をしている2人の小人で1人は挑戦的で、1人は保守的である。この2人が物語の佳境で大きな選択を迫られるーー。

 

 

 

読み終わったぼくはいやな気分になっていた。表紙を開いたときの感動など消え去って本のアラを探し回っていた。とりあえず言えることは道徳の教科書みたい、ということである。選択肢を与えておきながら実質正解が用意されている。最初は4択問題だったのに2択になり、選択肢の1つが徹底的に否定されてるようにみえる。どのキャラクターに近いか選ばせておきながら自分の用意していた答えから外れると否定されるのである。食うために飼われた豚はクラス会議を行っても「生き物の尊さを知るため」と称して喰われるのである。そんなものは教師のエゴではないか。

 


そしてこの本では最初から最後まで寓話と一方の小人が誉められ続ける。仰々しい帯にはじまり、本編の前に寓話を褒めさせて、物語の字の文でも一方の小人を称賛させ、最後には級友たちが揃って称賛する。あげく、物語に深く心を動かされなかった読者を否定するような文言まであった。

 


評価とは実績や行いによって与えられるものであり、自分でしてしまったらそれはセルフプロデュースである。

 


ティージョブズだかマークザッカーバーグだかの有名なスピーチで(有名だが、誰が話したのかは覚えていない)、大学の卒業生に「ぼくは学校を中退したから既に君らの方がすごい。これからの活躍を楽しみにしてる」というものがある。本当にすごい人は一般人に合わせて目線を低くする。へり下ることでこちらのステージにお越しになって、親近感を湧かせるのだ。自ら下駄を履くものは、自分を大きく見せたい小人である。