若手社員の逃げ場

仕事で辛いことから現実逃避して、気持ちの休まることを書きたいです。

倍速視聴と汚された心の洗濯

 


プロフェッショナルの庵野さんの回を観て、あの人の特異さに衝撃を受けた彼女とエヴァンゲリオンの序を観ることになった。一通りのエヴァ作品を観たぼくからしたら序は凡作である。アニメ版を綺麗な絵でまとめ上げてあるがアニメの序盤にあった気の抜けるような軽さがない(アニメ版のシンジくんは相手にボケられたらちゃんとツッコむぐらいのユーモアは持ち合わせている)。しかしこれまでの作品に触れてこずにきた新規視聴者は存分に楽しめるかもしれないし、これからシンエヴァまで追いつこうと思ったらこちらの方がハードルは低いだろう。

 


アニメ版の偉大さを示したものの、序のアクションシーンは見事である。初号機が、あの巨体でありながら綺麗なフォームで駆け抜けるシーンは美しさと豪快さを兼ね備えている。

 


それを彼女はスマホを構いながら見ていた。

 


ぼくはエヴァンゲリオンに関わらず映像作品をなにかしながら観る人がすきではない。テレビの録画を倍速で見る人なども理解できない。倍速で視聴する人は「この方が効率がいい」と言うが、それならば自分で進むペースを調整できる書籍などを利用すればいい気がする。ぼくはトーク番組がすきだ。『あちこちオードリー』、『アメトーク』、『ボクらの時代』。そこには話し手のリズムや間がある。本でいうところの「行間を読む」ではないが、リズムや間によって笑ったり、心に響いたりしてるように思う。話し方にもその人の人柄が現れる気がするのだ。

 


まさかドラマや映画を倍速で観てる人はいるまい。ながら見もあまりすきではない。CM中にスマホを構っていてCMが明けたのに気づかないのはまだいい。気づいたところでスマホを置け。そういった気が逸れてしまう"隙間"がないから映画館がすきだし、動画配信サービスがすきだ。映画の幕間にCMで流すのはスバルの家族CMだけにして頂きたい。

 


序を視聴したのはAmazonprimeだったのでCMはない。それでも彼女はスマホを構っていた。別の機会に、なぜ映画やドラマの2時間弱の時間で画面から目を離すのかを訊いたことがある。どうやら彼女はフィクションをクイズ感覚で楽しんでいるのである。『クイズ正解は一年後』の二時間セルフ問題だ。スマホを観ながらなんとなく頭に入ってきた情報から、犯人あるいは結末を予想する。たしかに彼女はミステリードラマを好んで観る。クイズであればヒントは少ない方が正解したときの喜びは大きいだろう。

 


ぼくはフィクションにおいて感情の移り変わりに注目する。登場人物たちの感情がどう変化して、感情の変化によりどんな結果がもたらせるのか。そこに作り手さんのメッセージも込められていると思うし、自分の感情も動かさられる。変化を観ていくので起承転結のすべてが見逃せない。変化する前を知ってないと心変わりに気がつけない。

 


根本から視聴の仕方が違う。だから分かり合えないだろう。見方が違うのだから別々に作品を視聴した方が穏やかに楽しめると思う。しかし彼女は一緒に映画を観ようと誘う。同じものに触れて感情を共有したいのだ。ぼくは同じ作品の楽しみ方ができる人と作品への想いを共有したい。

 


スタッフロールの後に、彼女と一緒にお風呂に入った。ぼくが湯船に浸かっていると彼女のシャワーの水飛沫がぼくの頭に降りかかった。彼女とはいえ1日の汚れが溶け込んだ汚水である。エヴァンゲリオンの序でミサトさんが「風呂は心の洗濯よ」と言っていた。ぼくは洗濯中に汚水を注ぎ込まれた。洗濯も1人で楽しみたいものである。