若手社員の逃げ場

仕事で辛いことから現実逃避して、気持ちの休まることを書きたいです。

読書猿『独学大全』で再認識する学び

 

 


あとひと月ほどで26歳になる。20代を折り返して30代に向かっていく。先日、スポッチャでバレーボールやテニスをやって、あまりにも身体が動かなくて驚いた。元々運動は得意ではないが、イメージの数歩後ろに身体が取り残されていた。どこかで聞いたが、アスリートのピークは24歳と言っていた。これからどんどん年老いてあらゆる身体機能が劣化していく。なのにぼくはなにも成し遂げてないし、何者にもなれていない。

 


これまでの人生で大きな挫折はなかった。それは小さな失敗をした時点で現実逃避をはじめて、深傷を負わないようにしていたからだろう。筋肉は過度な運動によって、組織が壊されて筋肉痛になる。その組織が回復するとより強い筋肉になる。ぼくは筋肉痛になる前に逃げ出していたのでなんの筋肉もない。

 


ある日、仕事で失敗したぼくに、上司がついて謝りに行ってくれたことがある。帰り道でへこんでいるぼくに上司は慰めのような言葉をかけた。

 


「お前がやってる仕事はパターンだ。覚えてしまえば派遣でもできる」

 

 

 

事実だった。ぼくと一緒に働いてる派遣さんはぼくと似た仕事をしてるし、なんならぼくの数倍の仕事量をこなしている。

 

 

 

「よその人間ができるんだから、お前もできるようになる」

 

 

 

上司の言葉はぼくの仕事は誰にでもできる仕事であると言ってるように聞こえた。自分でも大した仕事をしてないと思っていたし、これ以上責任が増えるような仕事を振られるのが怖かった。

 


上司との会話から数ヶ月は自分の仕事に意味を見出せなかった。誰でもできる仕事をして老いていく。老いがオーダーの納期のように迫ってきてる気がした。納期が迫っているのになにも形になっていない。買い手などどこにもいないし、納期がいつに設定されてるのかもわからないのに、ただただ怖かった。

 


この恐怖が和らいだのが勉強である。何者でもない自分がちょっとだけなにかに詳しくなる。仕事は団体競技だが、勉強は1人で完結する。学んだだけ新しいことに気づける。費やした時間だけ知識を授けられる。勉強は裏切らない。バラバラだったパーツは組み合わされて、なにかができそうな心強い予感を感じた。

 


勉強のモチベーションをあげようとして読んだのが読書猿さんの「独学大全」である。学ぶ意義からはじまり、資料の探し方、具体的な勉強の仕方などタイトルの通りの本である。

 


勉強に行き詰まったときに「自分の勉強法はこれで合ってるのだろうか」と不安になるが、この本でいくつもの勉強法に触れて、ひとつのやり方に固執しなくてもいいと気付かされた。色々試して自分にあったものを時間をかけて見つけていけばいい。

 


本書にて「テキストの文章を出来るだけ見ないで書き写す」というものがあった。頭の中で反芻して記憶しながら文字にする。どうもぼくにはこのやり方が合っているようで「三角関数」を完璧に理解した。学校で習った当時は三角形に向かって大きくSとかCを描いてサインとコサインを導く独特な算出方法を採用していたが、その手法だと分母に入れるべき値と分子に入れるべき値がごっちゃになる上に、三角形があらぬ方向に向いているとお手上げだった。

 


テキストを書き写してサインの意味を正しく理解した。サインとは「三角形の斜辺に対する高さの比」である。もう三角形がどこを向いていたって答えられる。

 


学生時代に曖昧に覚えていたものがはっきりとした形をもってぼくに培われた。わかるという嬉しさは「まだこの歳でも変われるんだ」という希望になった。

 

 

 

そしてこの本を電子アプリで読んでいるときに「更新データがあります。更新しますか?」と尋ねられた。電子書籍はデータを更新すれば増刷の際に変更になった部分も、一冊の値段だけでアップデートしてくれるようだ。小さく感動しながら「はい」と押して本を開いた。アプリの機能で気になった箇所にマーキングしていたがマーキングのデータが全て消えていた。「電子書籍のデータを更新するとマーカーは消える」。またひとつ賢くなった。