若手社員の逃げ場

仕事で辛いことから現実逃避して、気持ちの休まることを書きたいです。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』におけるシンジくんの処世術

 

 


2回の公開延期に油断していた。シンエヴァに向けてテレビ版を含めた過去作品を復習しようと思っていたのだ。それがどうだ、再発表された公開日がすぐソコに迫っていた。復習済みのファンには嬉しいニュースだろう。だがぼくは公開日にエヴァ熱をピークに持ってくために、あえて観ずにおいて置いたのである。完全な裏目。もう過去作品全てをおさらいするのは時間的にも体力的にも難しい。テレビ版の終盤や旧劇場版、あるいは新劇場版のQを立て続けに観て精神的に保っていられる自信がない。あれらはインパクト、あるいはメッセージ性の強さから適切なスパンを開けて然るべき作品だと思っている。

 


だから、ここからはじめます。『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』。本作はアニメ版や旧劇場版を踏まえたヱヴァンゲリヲンシリーズのリブート作品である。序盤こそこれまでのストーリーをなぞっているだけであったが、徐々に過去作との差異現れ出して、古参のファンでさえ予測できない衝撃的なストーリーが(主にQで)展開されていく。

 


ここでは『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』に関するネタバレをします。ご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


主人公の碇シンジくんは父親に呼ばれて職場に招かれた。その道中、使徒と呼ばれる巨大生命体が襲来。父親がシンジくんを自分のもとへ呼んだのは、人造人間ヱヴァンゲリヲンに乗って使徒と戦わせる為だった。そんな大層なことはできないと断るシンジくん。そこに満身創痍の女の子が医療用ベッドに乗せられたまま運び込まれてー。

 


内向きな性格のシンジくんの口数は少ないです。もっと本音を話した方がいいのではないか、とミサトさんからアドバイスを受けるとシンジくんは

 


「先生の言ってる通り(の最低限のことを)やってるんだからいいでしょ」と答える。黙って相手の言うことを聞くのがシンジくんの処世術なのである。これを作中では「ヤマアラシのジレンマ」を用いて説明している。身体に針を持ったヤマアラシは寒くて身を寄せ合って暖をとろうとしても針でお互いを傷つけてしまう。対人関係でも同じことが言えて不用意に他人の心に土足で踏み込むと思わぬ地雷があったりする。だから大人代表リツコさんは「大人になることはちょうどいい距離感を見つけること」としている。

 


ぼくはホンモノの針、つまり注射が非常に怖かった。あのとんがったいかにも恐ろしいビジュアルの物体が自分の体表を貫いて体内に差し込まれるのだ、怖くないわけがないだろう。会社の健康診断でも血液検査の時に本気で怖がっていたら幼子をあやすように「痛かったねぇ〜」と年配の女性がぼくの頑張りを評価した。

 


近づいてる意識はなくともほとんど事故のように人から精神的な針を刺されることもある。それは仕事が立て込んでいるせいかもしれないし、月の満ち欠けの問題かもしれないし、思い過ごしによることかもしれない。それが注射針のように実体を持って我々を怖がらさせる。一度刺された経験が、あるいは刺された経験の少なさから怖さは生まれる。

 


去年の終わりに血液検査をする機会があった。前日から注射が心配だったが、それ以上に朝ごはんを抜かないといけないことに不満があった。空腹で明らかに糖分が不足している頭で血液検査を担当する女医さんの前に座った。すると、針を怖がる前に既に針を刺されていた。早すぎて驚きと感動が怖さに勝った。それからも注射の機会があったが、もう恐れることはなくなった。

 


「大人になることはちょうどいい距離感を見つけること」である。しかし、こんなものはドラマチックな事件を待たずして見つかるものなのかもしれない。