若手社員の逃げ場

仕事で辛いことから現実逃避して、気持ちの休まることを書きたいです。

病院で階段を登り続けた話

 

 


健康診断を受けた。入社して3回目の健康診断になるが、診察の時に警告されたのは、はじめてだ。心電図の波形に異常が見つかったそうだ。長ったらしい横文字で疑いのある病名を言われたが、長くて覚えられなかった。お医者さんは「酷いと突然死します」と言った。今度はわかりやすく恐ろしくなった。

 


次の日に循環器内科へ行った。カウンターで昨日もらった心電図のコピーを出して診てもらった。

 


奥の部屋に通されてベッドに横になった。体に吸盤を取り付けられる。再び心電図を測る。紙が出おわると看護師さんが奥から階段の模型のようなものを運んできた。運動後の心電図を見る為に踏み台昇降をして心拍数を上げる。模型の階段は足場が光った。音楽と一緒に光が違う段に移る。光に合わせて階段を上り下りするように言われた。年齢によって光の速さが変わるようで25歳のぼくはかなり早いペースらしい。看護師さんが何人か覗き込んで「若いと大変ねぇ」と言っていた。

 


診察室に入ると先程の計測結果が机に乗っていた。小柄で白髪の先生は専門書を何冊か捲って「ないなー」と言っている。どうやら見せたいページが見つからないようだ。焦り方が大きかったので、このおじいちゃんの言うことを信じてもいいのかわからなくなる。「家庭の医学」でも探してるんじゃないだろうか。

 


本を見つけたおじいちゃんはマーカーの引かれたページを出してくれた。

 


話を聞くと激しい運動をしない限り心配はないそうだ。ぼくは元ボート部ぞ?陸上の800mの如く、全力に近い力を出し続けて速さを争うボート部ぞ?ゴール後に力を出し切った選手が気を失うことがあるボート部ぞ?先生の話を聞いた限りでは先天性の症状だが、今までの検査でたまたま見つからなかったそうだ。先天性なのでオールを漕いでいた頃には既に発症していたことだろう。よく生きていたものだ。風のない川でボートを漕いでシートに横になりながら死ぬのも悪くないかもしれない。