加藤尚武『現代倫理学入門』による優先される配分
「人を助けるために嘘をつくことは許されるか」であったり、「10人の命を救うために1人の人を殺すことは許されるか」などの難題を元に倫理学を学べます。
ぼくが考えさせられたのは
「平等を可能にするだけの豊かさがないと全ての人は救えない」ということです。
お金が有り余っていればSNSでお金をばら撒いたり、慈善団体に寄付することができますが、自分の生活もある。「まだ自分は恵まれている」と分かっていても身銭を切って人々を救うだけの余裕はない。
人口が増えればより平等を保つのは困難だ。
10人の人が8点の満足度で生きていたが、人口が増えて15人の内、8人は10点、7人は6点になったとしたらどちらの方が幸せだろう。
コロナ禍で飲食店は時短営業を命じられた。亭主は「大赤字だ」と嘆く。テレビのコメンテーターはコロナを終息させるためには「昼間の営業も自粛した方がいいのでは」と問いかける。一方で大手企業の株価は上がっている。
どう考えてもすべての人を救うことはできない。しかし国が見捨てることもできない。「緊急事態宣言の発令が遅いのではないか」と有識者が話していたが、安易な判断で苦しむ人が増えてしまう危険もあるのだ。
例えば、アメリカでは、移植用の臓器が不足しているため、配分に、最も重症の人を優先するという原則をやめて、最大の生存時間が得られそうな患者に配分するという原則に変えたそうである。これもたくさんの時間をかけた決定だと思う。
ちんたらしてたら益々、感染が拡がるのも分かる。それでも最大限且つ最多数の幸福を考えていかないといけない。